同じじゃないんだ(病院によって、手術の仕方も違いました)

手術前日の夕方、
最後の幸せとフルーツジュースを飲んで、
手術の事、子供達の事、生まれてくる赤ちゃんの事・・・
いろんな事を考えて眠りについた私。
いろいろ考えては見たものの、
手術の時間がやってきてしまいました。
少し前に、
たまたま仕事が休みだったダンナが病院に到着。
まだ名前も決めていなかったので、
それまで二人で名前を考えることにしました。

候補はいくつかあったので、見比べたり、
実際に名字とあわせて呼んでみたり、
名付けの本を読み返してみたり・・・
考えた割には、結局ダンナの一存で、
「紗那(さな)」という名前に収まりました。
「紗」という漢字も、「那」という漢字も、
美しい女の人という意味があるので
女の子にはピッタリだろうという事で、私も納得しました。
名前が決まってホッとしたのと同時に、
手術への不安がまたこみ上げてきました。
帝王切開の何が嫌って、あの注射!!!
背骨に打つ麻酔の注射!!
でも、名前を考えていたおかげで、
時間が早く流れたのか、
不安要素を考える間もなく看護婦さんが呼びにきてくれました。

運ばれる私に、読んでいた本からチラッと顔を上げて、
「頑張ってね。」とダンナ。
運ばれながら看護婦さんに、
「ダンナさんって、すごくあっさりしてるのね。」と、
笑われてしまいました。

いよいよ手術。
まずは、例の注射です。
あぁ、またきたよ!あの悪夢の時間が。
背中を丸めて、背骨を突き出す格好になる私。
まずこれがきつい。
臨月のお腹の大きな妊婦が、
横になった状態で背中を丸めて突き出すのは、
かなりきついものがあるのです。
「動かないでねぇ。」と先生の声。
「ハイ」と言いながら、気合を入れたつもりだったのに、
針が入っていく瞬間に、体が
ビクッと動いてしまいました。
「ほらっ!動かないでって言ったでしょ?」
「はいぃぃ〜〜〜。」
もう失敗は許されない。さらに気合を入れる。
グリグリグリ〜〜〜!!!
うきゃぁぁぁぁぁ!この感触が嫌なんだよぉぉ!
でも、さすがは慣れている先生。
双子の時みたく、何度もやりなおす事もなく、麻酔終了。
あとは同じように、麻酔がかかっているかどうかのチェックです。

あ、ここで、書き忘れていた事が!
前の帝切の手術は、意識がはっきりあったのです。
局部麻酔で手術をしたので。
で、前日に先生に「今回はどうする?」って聞かれていたのでした。
最初は、「意識があるほうが。」なんて言ってた私でしたが、
当日の朝になって、
「やっぱり、眠っている間に終わらせてください。」なんて、
弱気な選択をしていたのでした。
ま、眠っている間といっても、完全に眠ってしまうわけではなく、
まわりの声とかは聞こえるし、
生まれてすぐに赤ちゃんの顔も見れるよという事だったし。

だんだん意識が薄れてきて・・・・・・

当然この間の事は、わからないのですが。
でも、すごい事が起きていたのです。私の中で。
手術の間、半分眠っている状態の私は、
すっと夢を見ていました。
夢というより、幻覚を見ていると言った方が、近いかもしれません。
その幻覚が、すごかった。
うまく書けないけど、
ずっとコンピューターグラフィックの世界にいるような感じで、
私自身はふわふわ飛んでいるんです。
まっピンクの部屋の中をふわふわしていたと思ったら、
その隅っこに小さな穴が開いて、
そこに部屋ごと吸いこまれていくのです。
もちろん私ごと。
まるで、お風呂の水をぬいていく時のように。
出てきたら、そこは人間の体の中で、
私はどうやら血管の中にいて、
赤血球みたいのと一緒に流れていくのです。
流された先は、七色の部屋で、またふわふわと飛んでいて、
そしたら部屋がどんどん大きくなったり、
そうかと思ったら、
回りのふわふわに押しつぶされそうになって、
すごく苦しくなったり。
そのあいまあいまに、先生や看護婦さんの会話が、
すごく遠くで話している様に聞こえるのです。

いろんな部屋や場所に、
流されたり押しつぶされそうになったりしてるうちに
今私は何をしているのかわからなくなってしまいました。
「あれ?私はどこにいるのだろう。何してたんだっけ?
一生懸命考えます。
で、なぜか知らないけど、私がこれから生まれるところかな?
という気がしてきたんです。
丸まって、ひざを抱えて、
産まれていくような錯覚を覚えます。
「これから産まれるって事は、私1回死んだのかな?
・・・・・・まて、そんな事ないはず。何してたんだっけ?」
それからかなりの時間(私にはそう感じました。)考えて、
やっと自分が出産途中だった事を思い出しました。
「そうだ!私赤ちゃん産むんだった。」
思い出してホッとしたのと同時に、
車酔いみたく気持ちが悪くなってしまいました。
「あぁ、でももうすぐ会えるんだから、頑張らないと。」
多分そのときには、
すでに赤ちゃんは産まれていたと思いますが、
そんな事知るよしもありません。

次に気がついたときは、なんとなく周りの様子が見えてきました。
でも、目だけできょろきょろ見回しても、(体が動かないので)
誰もいません。
みんなどこ行ったんだろ?赤ちゃんは産まれたのかな?
で、声を出そうと思うけど、うまく声も出せません。

仕方ないので、そのまま待つ事にしました。

よく耳をすましてみると、遠くでいろんな音がしてました。
器具がガチャガチャしてる音。
看護婦さん達の話し声。
誰かがいるのがわかって、少しホッとします。
どのくらい待ったでしょうか?
看護婦さんがきて、
「あら?もう目が覚めました?」
と話かけてきてくれました。
そっちに目をやると、
「もう少し待っててね。」
と、またどこかに行ってしまいます。
「どこに行くのぉぉ〜〜?」
不安になってる私のとこに・・・

きました!!!
ついに赤ちゃんが。
婦長さんが、赤ちゃんを私に見せて、
「女の子ですよ。大きいのよぉ。」
と言います。
「見える?」
と言うので、うなずくと、
「おっぱいあげましょうね。」
と私の右の方に赤ちゃんを寝かせてくれました。
おっぱいをくわえさせてみると、
チューチューと力強く吸ってくれます。
「あら?この子は、飲み方上手ねぇ。」
婦長さんが誉めてくれました。
動かない体を一生懸命動かして、赤ちゃんを見ていると、
急に気分が悪くなってきました。
うっ、吐きそう・・・
婦長さんに、どうにか吐きそうな事を伝えると、
「吐きそう?!ちょっと待って!!!」と、
容器を持ってきてくれました。

・・・その後は、詳しく書く事もないので、省きますが(笑)
吐いてしまった事で、急に赤ちゃんは連れ去られ、
私は病室に戻る事になったのでした。
病室で待っていたダンナは、かなりの上機嫌。
「みた?」
「うん。抱っこした。」
ホクホク顔です。
どうやらポラロイドで、
抱っこしてる写真を撮ってもらったみたいで、
それを眺めてニヤニヤしてます。
「すごく大きい。3500gあったってよ!」
さんぜんごひゃくぐらむぅぅぅ?!
大きい、大きいとは聞いてましたが、そこまで大きいとは・・・
「髪の毛も、ふさふさだし、
顔もはっきりしてる。ムッチャ可愛い!!!」
もう、親ばか全開でした。

私は?
その日は、チョットだけ病室につれてきてもらいました。
おっぱいを吸うわが子を見て、
親ばかホルモンが、
一気に爆発したのは、言うまでもありません。(爆笑)

次の日、傷口の痛みと戦っていると、先生がやってきました。
傷跡を見ながら、
「赤ちゃん、大きかったねぇ。あなたは初産と一緒なんだから、
3500もあったら、出てこれるわけないよ!大きくしすぎ!」
と、笑われました。

そして、お昼にもならないうちに、
親ばかダンナがホクホク顔でやってきました。
病室のドアから顔をのぞかせて、私に声をかけると、
すぐに赤ちゃんを見に行ってしまいました。
それから、20分は戻ってこなかった!
戻ってきて、開口一番
「可愛いやぁ。」
ヘラヘラしてます。
手には、カメラ。
新生児室のガラスごしに、写真を撮ったらしいのです。
その様子に見かねたのか、
すぐに看護婦さんが連れて来てくれました。(笑)
ダンナに赤ちゃんを抱いてもらって、
その間、看護婦さんと術後の経過の話をしました。
私が一番に訴えた事は、
「空腹」(爆)
「まだ、食べれないのよねぇ。ゴメンねぇ。」
と言われましたが、
夜、吸い口(寝たままでも水分を取れるようにした入れ物)を
持ってきてくれました。
「ホントはダメなんだけど、術後の経過もいいし、
治りが早いから、婦長さんの許可を取ってきました。」
と笑ってました。
「明日からは、おかゆとか食べれますからねぇ。」
マジっすか?こんなうれしい事はありません。
双子を産んだ時の、2.5日の苦しみが、
この病院では、1日に短縮されたのです。

小躍りしたい気分でした。

病院が違うと、
手術も全然違うんだなぁと感じた出産でした。
そうそう、私が気分が悪くなって吐いたのは、
「最後の幸せ」と、
フルーツジュースを飲んだからです。多分・・・
「○時以降は飲み食いしちゃだめんですよ。」
と言われた時間ぎりぎりに、
飲んだ為にこんな状況になったものと思われます。
みなさんも注意しましょう。
って、こんなに食い意地のはったヤツは、他にいないかな?

 


たくさんミルクを飲んでます!

むにゃむにゃ・・・眠いんだよ!

上に書いてあるとおり、ダンナが新生児室のガラスごしに撮った写真です。